Ⅵ.恋人たち




正位置 愛、情熱、集中力、妄執
逆位置 失恋、空虚、無視


正位置 愛、情熱、夢中、妄執
逆位置 失意、空虚、無視

 情熱と集中力の象徴。
 語呂が悪くて省略されがちだが、本来は「恋人"たち”」。

 「恋人たち」というカード名の通り、元のカードには男女の姿が描かれている。図柄によっては女性が二人いて修羅場まで演じている。
 そのまま「恋愛の成就」を意味するカードとして読みたいところだが、如何せん占いの暗示としては汎用性が低い。
 そんなわけで、タロットリーダーたちはいろんな理屈をつけてこのカードを恋愛以外の意味に紐づけようとこじつける。以下に紹介するのはその一例である。

 「恋人たち」のカードが示すものは、何らかの概念に対する「愛」や「情熱」なのだという読み方がある。
 Loveというのは大変多くの意味を持った単語で、一般に想起する「恋愛」の他にも「家族愛」や「友愛」など様々な場面に用いられる。
 海外では、神からの「寵愛」を「Agape」の他に「Love of God」と表現することさえある。そして在りし日の宣教師たちは、この「Love」を、あえて「愛」ではなく「大切にする」と訳したらしい。
 当人たちとしては日本の「愛」と英語圏の「Love」の間にあるニュアンスの剥離に苦心した結果であろうが、それぞれの単語が持つ本質をうまく捉えたエピソードといえよう。
 前置きが長くなってしまったが、かけがえのない何かを大切にしたいと願う情熱――即ちLoveが、このカードの本質なのではないだろうか。

 キャラクターとしては「火が付くと凄まじい情熱やそれに伴う集中力を発揮する」「しかしその間は周りが見えなくなってしまいがち」、そんな人物が当てはまる。
 所謂「恋は盲目」というやつである。

以前の【恋人】の解釈


正位置 均衡、円満、調和、妥協
逆位置 不均衡、破局、破綻


正位置 均衡、円満、調和、妥協
逆位置 不均衡、破局、破綻

 均衡と調和の象徴。
 語呂が悪いので度々省略されるが、本当は恋人「たち」。

 一般的には「恋愛」「情熱」といった解釈の為されやすいカードだが、今回は「2つのものが均衡を取れている」暗示として読んでいる。【女帝】や【皇帝】が暗示の対象を王族に限定しないのと同じように、このカードは恋愛に意味を限定したカードではないと判断した。
 たとえば友人との関係について占う時にこのカードが出たとしても、別に「これから恋愛関係に発展するでしょう」という意味ではなく、「お互いを尊重し合う良好な関係ですね」という感じだ。無論、それが深まって恋愛に発展することもあるだろうが。
 このカードは一対の男女が描かれていることから「双子座」に対応しているという解釈もあり、私自身はこの意見がかなり近い。

 さて、人付き合いというものには「妥協」というものが付き物である。
 自分が好きなものでも、相手が好きとは限らない。あるいは自分がやりたいと思っても、それを実行すると相手に迷惑がかかるかもしれない。
 人間関係の大原則だが、円満な関係を続けていくためには言うまでもなく、その欲望を封じ込めることになる。
 調和の本質とは、平和のために支払う代償なのである。

 キャラクターとしては「相方と仲が良く、以心伝心」「ただし相方のために無茶をしたり、自他を切り捨ててしまいがち」、そんな人物が当てはまる。
 良くも悪くも「絆」を象徴するカードと言えるだろう。