自由と無垢の象徴。
タロット番号がないという特殊なカードであり、これが大アルカナ「0番目」のカードなのか「22番目」のカードなのかという点からして解釈が別れる。
字面から一見すると「頭の悪そうなカードだな」と思ってしまいがちだが、重要なのは「誰にとっての愚者なのか」そして「何を以て愚かとされているのか」という点である。
我々は社会的なルールや常識から逸脱した者を見た時、しばしば「あいつは間違っている」「失敗する」と彼を嘲笑う。
しかし実際のところ、社会的な常識が常に正しいとは決して限らない。彼が単に常識を知らないだけの馬鹿なのか、それとも型を悟りあえてそれを破ろうとする賢者なのかは誰にもわからない。
このカードが象徴するのは、そんな愚者たち、つまり「しがらみのない者」「自由な者」である。
トランプのジョーカー、つまり「ワイルドカード」の原型がこのカードであるという逸話が、【愚者】の本質を端的に表している。
このカードが示す自由に、単なる無法は当てはまらない。
無法者は法に対しては自由であるが、別の力であったり、あるいは自らの無法という生き方に縛られているからである。
むしろ、無法者であるにも関わらず公権力に与したり、強者であるにも関わらず弱者に与したりといった、掴み処のない気紛れな姿こそが【愚者】に相応しい。
【愚者】は何者にも従わず縛られず囚われない。彼らは自分にしか従わないのだ。
キャラクターとしては、「いかなる制約にも囚われず自由に振る舞う」「ただしその自由さは悪徳にも向けられる」、そんな人物が当てはまる。
何事にも囚われず思った通りに行動してみなさいというメッセージを与えてくれるが、実際に歩いたり方角を定めるまでは手伝ってくれない。
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